半導体素子の破壊につながるサージ電圧の発生を防いで、素子の動作条件を定格内に収めることで、無調整で安心して使用できるポイントデコーダが実現できました。
前回試作した小型化版Ver2は、パーツの間隔が狭い部分があって実装が難しかったため、これからの増産に備えて実装が容易なよう、パーツの構成や配置を見直しました。サイズは、前バージョンと同じ22mm×15mmです。
・機能
これまでの機能に加えて、出力のショートや過大負荷から保護するために、電流検出機能を追加し、過電流を検出した場合に(2A以上)出力をオフにするようにしました。
サージ電圧とは無関係で(サージは高電圧ですが電流はわずかです)、正常動作時には機能しない安全装置です。
・外観
一部の部品を変更し、基板サイズは変えずに部品の間隔を少し広げました(最小0.4mm位)。前バージョンでは、こて先やピンセットが入りにくい部分もありましたが、改善しました。
コストは部品代が少し下がって、600円+基板(数十円)くらいです。
小型化はほどほどにして、主なチップ部品は1608、PICはTSSOPにしました。
片面実装ですので、厚みは約2.9mmです。
・ポイントへの組み込み
KATOのHO手動ポイントR550(2-852)+ポイントマシン(2-504)に組み込んでみました。
デコーダはポイント本体内、配線も外から見えないように道床内に収めます。
●ポイントマシンの配線
ポイント本体の隙間に配線できるように、ワイヤーを細いもの(今回はAWG30の耐熱PVC)に交換して、横の穴からポイント本体に引き込みます
●ポイント本体内の配線
AWG30のワイヤーは、プリント基板の裏の隙間を通せます。ポイント裏蓋の突起や可動部分と干渉しないように配線します。デコーダ本体は絶縁両面テープで、裏蓋の突起を避けて、プリント基板の上に固定しました。薄い両面テープであれば裏蓋には当たりません。
厚みのある熱収縮チューブを使うと蓋が閉まらなくなるかもしれません。
本来は、両面テープがはがれて周囲の配線とショートしないように、しっかり絶縁するか、剥がれないように接着剤で固定するべきですが、ここでは分かりやすいようにむき出しのままで撮影しました。
●調整
いまのところ調整項目はありません。定格内で余裕があるので、確実に動作させるよう、電流制限はなし、通電時間は長めの60msに固定しています。
アドレス設定は、基板上の設定ピンとレールをショートさせながら、設定したいアドレスを含んだ切り替えコマンドを送信します。(DS51と同じ方法です)
・動作テスト
・今後
増産して、手持ちのポイントへの組み込み作業を進めます。
また、関係する方々にもできるだけ早く提供させていただく考えです。
テストを終えた後で、少し先になると思いますが、多くの皆様に活用していただけるように、詳細な情報や実機など何らかの形で御提供することを考えたいと思います。
当初は、回路図や基板のパターンなどをすぐにでも公開させていただくつもりでしたが、誤解や事故などのトラブルを避けたいため、慎重に進めさせて頂こうと思います。
特にご理解いただきたいのは、ポイントデコーダが焼損する主原因は、直流回路の抵抗値で説明できる過電流ではなく(数Aクラスのドライバを焼損させるほどの大電流にはなりません)、交流回路としての扱いが必要な、大きなインダクタンス成分を持つ電磁石が使用されているために発生する過渡的な高電圧(サージ)だという点です。
この現象についての誤解や誤った情報が、適切な対策を滞らせたり、無用な論争などのトラブルの原因となるので、資料や実例を揃えるなど、どなたにも納得いただける材料を整えたいと思います。