コイルサージのシミュレーション

AnalogDevices社が提供している回路シミュレータのLTspiceを利用して、電動ポイントのコイルサージをシミュレーションしてみました。
アクチェータの機械的な動きなどによる磁界の変化は考慮していません。

L1とR1は、電動ポイントのソレノイドのインダクタンスとESRです。
KATOの6番電動ポイントを実測した値を使っています。
N-MOSは、標準のライブラリの中から、試作デコーダで使用しているHブリッジのローサイドに近い特性のもの(VDSS=30V、CISS=約500pF)を選んでいます。
ゲート側の回路は試作デコーダと同じです。この部分の回路図は省略させてください。


ゲートを矩形波で駆動した場合の波形です。ドレイン電圧(紫)は450Vに達しています。サージの実測データに近い結果です。
ドレイン電流(緑)は駆動時の600mAが最大で、サージ電流は20mA程度に留まっています。素子が焼損する原因は大電流による熱ではなく、高電圧による破壊のようです。


実際の試作デコーダとほぼ同じ時定数でターンオフの時のゲート電圧を制御した場合の波形です。6Vほどの山がありますが、定格電圧に十分に収まっていてサージは発生していません。実測とよく似た結果です。


電動ポイントのコイルのインダクタンスとESRを実機を測定して求め、LTspiceで、ターンオフの時のサージ電圧と、サージ対策の効果をシミュレーションしてみました。
電動ポイントの特性を完全にはモデル化できていないので多少の誤差があるはずですが、定格を超えるサージや、サージ対策の効果を予測するには十分有用な結果になりました。
これで、実験で実機を焼損させる危険を冒さずに、複数のポイントマシンを並列接続した場合などのクリティカルな状態での結果を予測できるので、安心して試作実験に取り組めます。ポイントマシンに限らず、モーターの制御等にも応用できればと思います。

追記:
同じポイント複数台を並列に接続した場合のシミュレーションを行ってみました。
  同じ特性のポイントを2台並列接続 ⇒ 定格内
  4台並列 ⇒ 回路の定数を調節しても定格内には収まらない
という結果でした。モデルや測定値の誤差があるはずなので参考値です。
定格の大きな素子を使えば4台以上の並列も可能ですが、電圧変動や電源容量の問題もあって、あまり多数の同時動作は実用的ではないと思いますので、いまの仕様のままで最終版を製作しようと思います。
定格を超えてすぐ損傷するというものではないので、4台並列した実機での高負荷テストでは、定格外で辛うじて動いていたのかもしれません。